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福岡地方裁判所柳川支部 平成5年(タ)1号 判決

主文

一  原告らの請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求

髙田猛(本籍福岡県柳川市大字間四一八番地、明治三九年一〇月二二日生、昭和三五年六月一七日死亡)が高田ヤク(本籍福岡県柳川市大字間四一八番地、明治一四年一一月一四日生、昭和三二年七月一八日死亡)の養子であったことを確認する。

第二  事案の概要

本件は、前記亡髙田猛の妻であった原告髙田モトエ、亡猛、原告モトエ間の三女原告椛島アケミ、亡猛、原告モトエ間の長男亡髙田清彦の妻であった原告高田千鶴子及び亡清彦、原告千鶴子間の長男原告髙田和浩、長女原告古賀美穂子、二男原告髙田秀也(以上の身分関係につき甲一ないし四)が、検察官を被告として、亡猛が前記亡髙田ヤクの養子であったことの確認を求めた事件である。

原告らは、亡猛は戸籍上亡ヤクの養子とはされていなかったが、亡猛は、大正二年三月三一日、同日亡ヤクと婚姻の届出をした亡髙田卯吉と同人を養親とする養子縁組をし(甲一ないし三)、以来亡卯吉を父親とするは勿論、亡ヤクからも母親として愛情を受けて成長し、孝養を尽くしてきたものであるうえ(甲四、高田千鶴子)、当時においても配偶者のある者が未成年者を養子とするには配偶者とともにすることが要求されていたのであるから、亡猛が大正二年三月三一日亡ヤクとも養子縁組をしていたことは明らかであり、前記戸籍の記載は戸籍官吏の過誤に基づくものであると主張している。

第三  当裁判所の判断

旧民法下においても、養子縁組は市町村長任に届け出で、当該官吏がこれを受理することにより効力を生じるものとされていたところ、本件においては、亡猛、亡ヤクの間に実質的に養子縁組をする意思があったことは推認されるものの、その届出がなされたことを認めるに足りる証拠はない。戸籍上その旨の記載がないのは戸籍官吏の過誤に基づくものであるとの原告らの主張は、本件事態発生の理由として考えられる幾つかの可能性の一つに過ぎず、推測の域を出ないものであって、これを裏付ける証拠もない。

したがって、原告らの請求は理由がないものといわざるを得ない。

(裁判官 福崎伸一郎)

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